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札幌家庭裁判所室蘭支部 昭和39年(少ハ)2号 決定

少年K・T(昭二四・七・二七日生)

主文

当裁判所が少年に対して昭和三九年七月一四日なした少年を初等少年院に送致する旨の保護処分決定およびその附随処分の決定を取消す。

理由

当裁判所は、少年に対する昭和三九年少第五九三号銃砲刀剣類等所持取締法違反保護事件について、昭和三九年七月一四日、少年を初等少年院に送致する旨の保護処分決定をなしたが、その理由として、「少年が昭和三九年六月○○日午後四時五〇分頃江別市○○町××番地附近路上において、業務その他正当な理由による場合でないのに刃体の長さが六センチメートルを超える折たたみ式ナイフ一丁を携帯していた」旨の非行事実を認定している。

しかしながら、当庁調査官平館久男作成の「保護処分取消事由の発見について」と題する報告書および前記保護事件の証拠物である折たたみ式ナイフ一丁(当庁昭和三九年押第七五号の三)によれば、本件折たたみ式ナイフは、刃体の長さが七・二センチメートル、刃体の幅が一・五センチメートル、刃体の厚さが〇・一センチメートルであつて、かつ、開刃した刃体をさやに固定させる装置を有しないものであることが明らかである。すなわち右資料によれば、本件折たたみ式ナイフは、銃砲刀剣類等所持取締法第二二条但書、同法施行令第九条第二号、同法施行規則第一七条により、携帯を禁止されない刃物であると認めなければならない。してみれば、少年については前記銃砲刀剣類等所持取締法違反の非行事実が存在しなかつたものというべきであり、右非行事実の存在を前提としてなした前記初等少年院送致の保護処分決定は、少年に対して審判権がないにも拘らず行なつたものであるといわなければならないから、少年法第二七条の二第一項に則り右保護処分決定およびその附随処分の決定を取消す必要がある。

よつて、主文のとおり決定する。

(裁判官 松本時夫)

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